■五四巻。紫式部作。長保三年以後の起筆とされるが成立年代は未詳。主人公光源氏が藤壺宮との過ちにおののきながら、愛の遍歴ののち、准太上天皇となるが、託された女三の宮と柏木との密通事件によって過去の罪の報いを知り、苦悩のうちに生涯を終える雲隠までの前編と、つなぎの三帖を置いて、柏木と女三の宮との罪の子薫を主人公に、競争者匂宮と宇治の姫君たちを配し、暗い愛の世界を描く後編の「宇治十帖」とから成る。仏教的宿世観を基底にし、平安貴族の理想像と光明が、当時の貴族社会の矛盾と行きづまりを反映して、次第に苦悶と憂愁に満ちたものになっていく過程が描かれ、「もののあわれ」の世界を展開する。日本古典の最高峰とされる。擬古物語はじめ、謡曲、御伽草子、俳諧、連歌など後世に多大な影響を与えた。源語。紫文。源氏。なお、古くは、「源氏の物語」と「の」を入れて呼ばれたらしい。(ブックシェルフより引用)